ワンぱらりんっ!

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及川 譲二(仮名)さん 79さい      趣味:愛犬のブラッシング

ここは大阪北河内。小さな町のその片隅、老朽化したマンションの3階に及川様は愛犬ペロ君(ポメラニアン)と暮らしている
陽の当たらないマンションの暗くて急な階段を上る。ちなみにエレベーターはありません。303号室、あと付けされた玄関チャイムだけが新しい。『ピンポーン!‼』マンション中に響き渡る大音量😅及川様は難聴なのだ。補聴器は高価で買えないとのこと。集音器のご提案にてただいま検討中

所々錆びている鉄の玄関扉を引いてこんにちわー!」
家の中はブルーシートが敷かれていて金盥が一つ。最近雨漏りするらしい。
ブルーシートの敷いてない所はワンちゃん用おしっこシートが敷き詰められている。最近尿漏れするらしい。      
足の踏み場を考えながらつま先で歩く。
「やぁ!ピンポン鳴ったか?」「鳴りましたよ、おっきい音」「あぁーそー」とベッドに端座位の及川氏は鼠色の毛玉だらけのスエット上下に紺色のちゃんちゃんこ姿。膝の上には、両耳に緑色のリボンを付けた愛犬ペロ君が優雅に寝そべっている。
「ペロ君、こんにちは~💛」とおべっか使ってみる。

『ガルルルルッ―‼』鼻にシワ寄せ歯茎むきだし。犬歯むきだし,闘志むきだしで睨まれた。カワイクねぇ―‼ボコるぞブサ犬‼あっち行け‼、と心で叫ぶ。
「ペロ君、今日はまた赤いダウンベストですか、いつもオシャレですねぇ」「うん。昨日ペットショップで買ったんよ、お散歩用に。外は寒いから。わんわんダウン
チッ❕なーにがわんわんダウンや!そんなちんちくりんの服にいったいいくら払ったんや❓ペロにかけてる年間費で補聴器買えるんとちゃいまっか⁈少なくとも新しいスエット買えまっせ!、と心でボヤく。


さんぽ」と聞いたペロはすかさず及川氏の膝から飛び降り、玄関扉の前まで走っていく。当方モニタリングの用がございます。及川氏の左耳に向かってゆっくりと低めの声で話しかける(左耳のほうが多少聞こえやすいとのこと)。    
体調、生活環境に良くも悪くも変わりなしとのこと(雨漏りしてるけど)。「今から散歩に行くんで一緒に出てくれる?」「はい」。及川様は両膝変形性関節症。ベッドサイドに設置した手すりを両手で握り「よっこらせ!」と
やっとこさで立ち上がった。


「動き始めが一番痛むんや、膝。」「シートで滑らんように気をつけてください」
「うん」。急な階段を降りれないペロ。及川様も手摺りと杖で両手をふさがれるため、いつもスポーツバッグを斜めに掛けて、そこにペロをいれます。
1階に着いたらペロを下ろしてやり、スポーツバッグは階段横のスペース、朽ちかけた木製の掲示板に打ち付けたL字フックに引っ掛けておきます。
鍵をかけ、さて、と振り向きざまに及川氏はバランスを崩し突進歩行!


危ない!思わず後ろから両手で及川氏の腰をつかみましたがその瞬間、
バッグからペロが投げ出されてしまいました。『❕❕』
「ぺ、ペロ...」
3階から真っ逆さま。真下を覗き込む。
音もなくポインセチアの植え込みだけが眼下に広がる。
「及川さん、落ち着いて。ゆっくり降りてきてください。」
こちらは大急ぎで階段2段飛ばしで駆け下りた。
ペロが見当たらん。どこまで飛ばされたんや?さっそく天国行った?そんなアホな😢
悪口言ってごめんペロ。ぺロく~ん( ;∀;)
「あ?」花壇のポインセチアが動いた。そんなアホな...。


あぁ。それはポインセチアの中に座る赤いダウンのペロ君だった
「ペロッ❣❣」
ペロはすっくと立ちあがり、全身ブルブルをして、
       こちらに向き直った。
        にっこり笑った。ような気がした。


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